恐ろしく、やる気のない日々をダラダラと過ごしていた。モチベーションというものがどこにあるのかなんてわからないし、持ち直すことなんてないと思っていたのだが、急に楽になって持ち直した6月の頭だった。大好きな5月はあっという間に過ぎ去った。グダグダと怠惰に時間を浪費して過ごした。
怠くて怠くて堪らないし、胃痛とめまい、頭痛に悩まされた。毎日鉛のように重たい、（多分。だって鉛なんて持ち歩いたりしない）体を引きずりながら、なんとなく生き延びた感じ。私は自分の仕事が好きではないし、仕事に誇りを持っているなんて言葉を薄ら寒く感じるくらい、仕事とは生きていくための手段として思っているにすぎない。
驚くほど、精神的に追い込まれ、（理由なんてない）ただ、私の中からやる気と思われるものが微塵も無くなってしまっただけだ。お風呂を入るやる気も歯磨きするやる気をも吸い取りそうなほどの、無気力を発動してしまった。無気力を発動することはできたんだな。
有休を使って立ち直ろうともした。3連休が取れれば私は再浮上できるのだと知っていたから。
でも今回は完全にこれまでとは違っていた。再浮上に結局2週間余りの時間を費やしてしまった。とはいえ2週間完全に休んだりしていない。3連休の後は普通に、普通の顔して出勤していたし、客先での打ち合わせや、スタッフとの面談だってした。普通にしていたと思う。退職のことをずっと考えながら、スタッフへの前向きなアドバイスなんてして、スタッフに寄り添うなんて、我ながら内外の乖離に疲弊する。
私を退職から、転職活動から距離を取らせるものは、ただ一つ。やりたいことなんてない。という一点に尽きる。私には仕事なんてしたくないのだ。働きたくなんてない。このまま眠っていたい。そんな感じ。
なんの理由もなく、ズブズブと足首からとうとう鼻下まで沈み込んでしまった無気力の沼から脱出できたのもまた、なんの理由もない。5月の末日に突然気分が晴れて、何事もなかったかのように胃痛が消え去った。
とは言え、別に仕事に格別のやる気を見出してなんていない。いつもの通り、私はいつまでも眠っていたいし、重力を最小限に感じていたい。よくわからないが、横になっているのが楽なのだから仕方ない。
ともかく6月はとっても忙しくて、私は毎週の締め切りに追い回され、ヘトヘトになって過ごした。それから明日からの7月月初はいつもの通りの多忙となって、しばらくは結局ヘトヘトに過ごすのだろう。最近は営業時間が短くなっていたため、ドラッグストアへも行けず、近所のスーパーもやってないし、私は生活必需品の購入場所がなくなってしまい、本当に苦労していた。柔軟剤のない日々、洗顔石鹸がそこを尽き、サンプルを使い凌ぐ。仕事帰りに全ての用事を済ます生活をしていると、時短営業になると途端に立ち行かなくなる。休日があるだろうと思われるだろうが、あんまり休んでなかったなと思うのだった。
そんな中、私は1年半ぶりにライヴハウスへ出かけることができた。突発性難聴になったこともあるので、耳栓を絶対に持っていこうと思っていたのに、すっかり忘れ、イヤホンをくっつけたまま見ていた。そのため、コロナ前との違いはあまり感じない。イヤホンをしているとマイクを通さない人々の声やなんかはほとんど気にならないので、いつもより静かなのかどうかが判断できないのだ。
人との距離は以前より取れていたと思う。アルコールもなかった。ライヴへ行ったから元気になったというわけではない。耳栓をしているとライヴのあの音量が消えるので、物足りないのではあるが、イヤホンをとると耳が痛むので、ちょっと無理ぽい。
音楽なんてものは本当に数えきれないほどあって、各々がその自分の範囲の音楽に思い入れがあって、その場所を大切に思っていればいいんだろうと思う。そこが私とフィットするかどうかなんて関係ない。かっこいいと思う時もあれば、薄寒いと思うことだってある。私の主観的なものでしかないから。
ライヴが生活の中の日常を刻んでいた日々から変化し、たまにやってくるイベントのようになってしまった。1年半ぶりなんて海水浴かよ、と思う。なんだ冬に海入るつもりか。
最近、頭に浮かぶのは「これでいいのだ」の「私、毎晩祈ってたわ、悔い改めてくれることを。ねえ、これからは二人で罪を償う旅に出ましょう」のところ。「彼女の手を握り、ただ僕はありがとうありがとうと涙した。握った彼女の手は何故か冷たかった」なぜか冷たかった。という部分は一番最初に聴いた時から印象的でよく覚えている。
自分の心を打つものは、あまり時間によって変化しないのかもしれない。子供の時と大人になってからの印象が変化するものは多くあっても、変化しないものもきっとあるのだろう。とは言え、好きなバンドは変化したし、今聴いても好きって思えるものは結構少ないかも。
そう考えるとただ、私が今も昔もただ、オーケンが好きなだけだということになる。ただ、もうそれだけなんだろうな。
君の目だけ銀色で、その銀色が言う。もしも私が死んで幽霊になったら、もうこんな夜の闇は怖くないのかしら？
