芸術家と商業

映画を観た。こないだ ミッドナイト イン パリを観た。

ああ、パリへ行きたいなと思わせる映画だ。旅行なんてなかなかできないし、今となっては日本からパリへ行くことは、とてつもなく遠い道のりを果てしなく乗り越えることが必要になる。とはいえ、実際に日本からパリはそんなに近いものではない。

最後にパリへ行ったのは一体いつだったというのだろう。もう随分前、いつだったかな。

今朝、目が覚めて。それから付けっぱなしのTVと部屋のライトを消して、カーテンと窓を開けた。まだ仄暗い空を見るだけでは今日が晴れるのか曇りなのかを判断できなかった。

夏と比べると随分日の出が遅くなったし、早く暗くなるようになった。もう冬なのだ。

立冬が過ぎたのだから、冬なんだ。

 

イヴ・サンローラン(字幕版)

イヴ・サンローラン(字幕版)

  • 発売日: 2015/03/20
  • メディア: Prime Video
 

 

今朝、早い時間から観始めた。ずっと観たかったが先送りにしていた映画だ。

とっても本人に見える。デザイナーを映画にしたものは割とよくあるし、日本人でもないし、時々よくわからない描写もあるにはある。アーティストを題材にしているからなのか、フランス人を描いているからなのかは、正直よくわからない。

パリに行きたいな、という旅行気分で観るには少し毛色の違う作品だと言える。

人から見えないところで血反吐を吐きながらデザインをしていく様を見る。それから彼の才能に投資し、夢中になり、彼を最大限守っていく人々が描かれている。天才は近くにいる人を不幸にするが、遠くから賞賛している人々、崇拝している人々には幸せを与えることができる。と聞いたことがあるが、きっとそうなんだろう。

サンローランは初めからデザインの才能やセンスに恵まれたが、うまく生きていくことが苦手なようだった。生き馬の目を抜くような世界で彼が生き抜くには、ボードの上でしっかりと安定を保ち、波をうまく乗りこなし、ビッグウェーヴを越えていく人間の力が不可欠だ。

最初のコレクション。それから人間として、精神的にも肉体的にもすり減っていき、絶望していく中でのコレクションの成功をとても素敵に描いている。光の当たる場所、注目を浴びる場所。本当は自分の希望の中で生きていきたいだろうに、そこには人からの批判と評価とお金がついてまわる。プレッシャーとは違っているように見えたが、本当のところはよくわからない。自分の中から、全てが枯渇するなんて考えたことなんてなかったのかもしれないし。

世界的に有名で誰もが知っているメゾンを作り、成功させた才能については誰も疑わないだろうが、時代とタイミングにも勿論影響はされる。彼の舞台は全世界を示していたが、もっと小さなマーケットで同じように生きている人間は星の数ほどいる。

世界中から注目されたコレクションの成功と、文化祭で初めてのライヴを披露するバンドとの違いは大違いではあるが、舞台裏から眺める協力者や、客の反応を見守る関係者の気持ちは大差ないのかもしれないなと思う。

 

結局、そこにいるのは人間で、センスや才能、お金や人脈に大きな差があるのだろうが、見た目は大きく違わない。人種や性別に差はあれど、人間でしかない。ホモサピエンスだ。