9月のある週末に

夏が終わった。


8月が終わった時に夏が終わったと思う。台風も雨も多くて、夏とは思えない気温の為、もう夏ではないんだなと感じる。


今年の夏は短かったし、色んなこともあったけれど、何にもなかったかのようにも見える。側から見ていれば、何にもないただの日々の連なりでしかない。まあ、そういうもんだろう。それ以外には何もない。私にだけわかっていれば良いこともたくさんある。他の誰にもわからなくとも問題などない。


始まっては終わって、終わっては始まった。続けていくこともあり、やめていくこともある。もうあの光り輝く日々は夏の前だったのだなと改めて感じた。今日のお天気が6月だったのだと勘違いしても仕方ないくらいだ。まぁ、また6月にもどるなんてまっぴらだけどな。


街はAWが溢れていて、確かにいいなー、楽しみだなーなんて思うのだけど。いつも私は夏のことを考えている。キラキラ光る水面や、雫と波。まっすぐ射し込む光。蝉の声。なんばの駅前に非常に多くの人々が行き交う場所で、真っ白にひかるこの景色を時々ふと思い出す。


あれはどの夏だっけ?

あの日はいつかの夏だっけ。


あの夏に帰りたいなんて、思うことはないけれど。も一度だけ、1日だけでも、あの時のあの場所に戻りたいなと私は思う。



9月はいつもそう思う。いつかの9月は重苦しく、辛く長く、そして死ぬほど短かった。気づいた時には10月だった。



いつかあの日に帰ることなんてありえないけれど、いつもそっと帰ってみたい。あの時に、帰れたら、言えなかった事をしっかりと伝えたい。

もう2度と会うこともない。伝えることもない。話すことも、見ることも、目を合わすこともない。


動かなくなった手をしっかりと握った、あの景色は今でも鮮明に浮かび上がる。まだ少し温かみがあって、まだ普通に柔らかだったな。