散文とブルース

完全に夢から覚めた気分なのです。

 

大阪に戻ってから、朝一の仕事で打ち合わせに行った。

左耳は全く機能しない状態で、話している相手に体ごと正面を向けて必死に聞き取った。自分の声の大きさも良くわからないので、なんだかやっぱり夢心地。

大阪の耳鼻咽喉科で再度検査をされて、出張先での検査結果と全く同じ検査結果を渡された。

紹介状をもらって検査結果も渡したのになあ、と思ったものです。でもともかく「突発性難聴」と診断された。

30%は元通りの聴力に戻ります 30%は症状は改善するものの難聴は残ります 40%は症状が改善しません

と最初に言われました。そして、私は難聴の度合いが重いので、元通りになる30%に入る可能性は低いと思っててくださいね。と釘を刺された。

えー、最悪。治んなかったら補聴器とかなの?ライヴとか行ける世界になったら私行きたいって思うかな。

と平気な感じでその時は思った。でも、左耳は食器の触れ合う音、シャッターを閉める音、甲高い誰かの声、電車の音や、アナウンスの声だけは脳を揺さぶる感じで突き刺さる。

ざわざわした色んな音と声の中を歩くことにとても疲れることに気づいた。左耳は聴こえないけれど、いつもと同じようにイヤホンを両耳に入れて音楽を聴いて歩いた。

だけど、いつもと同じに音楽は聴こえなくて、これがずっと続くのかもと思ったら、その時は本当に嫌になって、同時にとっても悲しくなった。

 

突発性難聴になったのは初めてだが、騒音性難聴には以前なったことがある。ライヴ終わりから耳が聞こえなくなって、3日くらい経過してもやっぱりおかしかった時に、病院へ行ったことがある。その時も同じだったけど、ステロイドとビタミン剤とを処方してもらった。

しばらく経口薬で様子を見て、改善しなそうなら点滴治療を考えましょうと言われた。点滴の方がステロイドの量が多くなるのだが、ちょうど金曜だったので、週末様子を見てから考えましょうということになった。

私も週末に仕事があったので、ちょうどよかった。即刻服薬を開始して、心の中で念じた。

私の聴力を戻してください。こんなに音楽好きなのに、可哀想じゃないですか?と。

私だって誰に何を念じているのかなんてわかりませんよ。でもともかく念じたのです。

 

基本的に聞こえないのに左耳に入ってくる雑音がうるさいという変な状態が続いたため、家にいる時は左耳に耳栓をしていた。聞こえないのに聞こえる音だけは遠慮なくつんざく。厄介なものだと思う。

でも、本の少しずつの変化に日一日と気付くことになる。

いつもの通り、外にいく時はイヤホンで音楽を聴いていたので、音の聴こえ方はすぐに気づいた。昨日よりちょっとずつ聴こえているのだ。何にも聴こえなかった無音に近かったのに、シンバルだけ聴こえるとか、ハイハットだけとかそういったことに気づいた。

 

それからの1週間は、朝一の仕事とか病院とかが多かったので、図らずも早寝早起きを実行していた。それに雑音の中で過ごすことに、驚くほどストレスを感じていたのか、昼下がりにはヘトヘトになってしまう。夜、帰宅すると速攻で寝入りたくなる状態。それに8時間ガッツリ眠るなどの健康的な生活を送っていた。

耳を休めることって難しいのだろうと思う。眠るのか1番なのだろうな。

1週間経過した時には、人の声も聞き取れるようになって、ささやき声のように聞こえる状態になっていた。

その後は、メキメキ聞こえ始めて、ちょっとだけ違和感が残ってるかもなー程度まで回復。検査をするたびに聴力は戻り、前回の検査では右耳を追い越すくらいの聴力になっていた。私はいつも左耳で電話を取るので、きっと左耳が利き耳なのかなと思う。

ステロイドの服用はもう終了して、ビタミン剤と循環をよくする薬を飲み続けて様子を見ましょうというところまで回復した。元の聴力に戻る30%に入ったことはとても嬉しい。

 

病院から会社へ向かう為の最寄駅までの道すがら、bloodthirsty butchers の「散文とブルース」が流れてきて、めちゃくちゃエモい気分に。cloud nothingsとかと同じような気持ちになるな。泣ける。音楽っていいな!と思ったのでした。

 

 

誰かわからないけど、音楽好きの私の左耳に聴力を戻してくれて、ありがとう。

 

 

散文とブルース

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