夏の終わり


大阪の昼間を直撃した台風で、停電が続いていたところも、今は復旧している。あの後すぐに北海道で地震が起きて、なんだかもう、夏の終わりなんて季節はなくなったんだなと思った。



関空は今も、殆ど機能していないんだと思う。あんなに多かった観光客の姿も殆どなく、ミナミは閑散としている。インバウンド需要がいかほどだったのかと思う。



関西の購買意欲なんて、東京の比較にもならない。とはよく言われる事だ。客単価が全然違う。観光客が多くなりすぎた街は、地元の人間が離れてしまい、観光客がいなくなっても、地元のお客は戻らないと聞いたこともある。



街は閑散として、とても歩きやすい。道も店の中も。台風以降ずっとそうだ。街路樹は倒れて、すぐに伐採され、標識は上を向いている。生活は滞りなく、ライフラインにも問題はない。だけど、いつもと同じではない。



9月になると、父の命日がやってくる。

お盆に死んだ人が帰ってくるなんて、私は思わなかった。どちらかというと、父は命日とか、お彼岸にちらっと立ち寄ってくれるんじゃないのかなって思う。



昔、初めて実家を離れて暮らしていた頃、駅から自宅への帰りの上り坂で、父の背中を見た。こんなとこにいるはずなんてないのに、父だと思って、唐突に後ろから声をかけた。

ただいま。だとか、なんでいるの?だとか、父だと信じて疑っていない感じで言葉を発した。


私は自転車に乗っていた。歩く父を追い越しざまに、バチっと目があったのは、全くの別人で、驚きを隠さず、または少し怯えて、私を見た。そりゃそうだ。


私は、あんた誰?って感じで、そのまま自転車を走らせその場を後にした。あんなとこに父が歩いているわけない。わかっていたのに、父じゃないことに憤慨して、立ち去るなんて、どうかしている。


勿論、父がまだ存命だった頃の話だ。いくらなんでも、幽霊が坂道にひいひいしながら歩くなんて思わない。




また会いたいな。もう会えないってわかってるし、本当に会えたら多分ちびりそうだけど。

たまに、夢では会えるんだけどね。

もうすぐ、お彼岸がやってきて、私はお盆に行けなかったお墓まいりをする。あのクソ田舎で。